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それとも、解放?
「君が、悪いんだ…」
激戦の後、アスランを喪ったキラは ―― …
本編派生型アスキラパラレル18禁。
テーマは「調教」「リバ」「誘い受」。
……君が、悪いんだ。
君が…
僕を、置き去りにするから。
+
「…う……、…ぁ……っ」
薄暗い部屋に響き渡るのは。
甘苦しい喘ぎと、ひどく卑猥に響く水音。
「だいぶ…上手くなったね、アスラン……」
荒い息の合間に、語りかける。
僕の中心に顔を埋めている、”彼”に向かって。
”彼”はその言葉には何も答えず、ただ一瞬だけ。
瞳を、上げた。
(あ……)
その翡翠の瞳は。
確かにアスランのもので。
ぞく…っ
中心から湧き起こる甘い疼きとは別に。
胸が、苦しくなった。
「アスラ…ン」
思わず”彼”の髪に、指を絡ませる。
(不思議、だね…)
君が教えてくれたことを。
今度は僕が、君に教えてる。
「…ぅ、……うん、そこ。そう…」
”彼”は教えた通りに舌を這わせていく。
「…く……っ、あ、アスラン… ―― っ」
達するのが近いことを察したのか、”彼”は敏感に僕の弱いところを責めて。
「………っ ―― …」
声にならない声を上げて。
僕は、”彼”の口に吐精した。
+
ようやく”彼”が顔を上げる。
肩で息をする僕を、見下ろして。
その瞳も、髪も、顔も。
すべてはアスランのものなのに。
ぼんやりとした頭の中には。
甘い陶酔と。
どこか醒めた感情が、せめぎあっている。
理由なんか、とうの昔に知っていた。
だって”彼”は、アスランじゃない。
アスランだけど、アスランじゃない。
僕の瞳から、一筋涙が零れた。
けれどその指は、僕の涙を拭ってはくれない。
『キラ』
終わった後は。
いつも優しく耳元で僕の名前を呼んで。
滲む涙を、唇で拭ってくれた。
まだ息が上がったままの躯で、抱き合って。
鼓動さえも、ひとつになれたようで。
『アスラン』
名前を呼ぶと。
僕しか知らない、笑顔をくれた。
その君は。
もう、いない ――
+
戦争は終わった。
たくさんのものが失われた。
失いたくないから、戦った。
僕も、アスランも。
戦って、そして ――
僕は、アスランを失った。
僕たちは…オーブのみんなは。
形の上では、勝ったのだろう。
連合にも、ザフトにも。
けれど。
失ったものは同じだった。
多くのものが、失われた。
戦争には、勝者も敗者もない ――
残ったものは、勝利の喜びなんかではなく。
途方もない程の、哀しみだけだった。
+
すっと、頬に何かが触れて。
思考が中断された僕は、その理由を知った。
「アスラン…?」
”彼”がじっと、僕を見つめていた。
その翡翠の瞳で。
まるで壊れ物を触るかのように。
僕の頬に、触れていた。
どくん
その唇が、僅かに開かれる。
「キ、ラ」
掠れたような、声で。
それでもその声は。
確かにアスランのもので。
「…あ……」
言葉にならない。
でも、その瞳から視線を逸らせない。
そんな僕を、じっと見つめたまま。
”彼”が僕の唇に触れる。
最初は、軽く触れるように。
「ン……っ」
そして段々と、深く、貪るように。
僕が教えたとおりに。
……僕が、
君に、教えてもらったとおりに。
深くなっていくキスに、堪えきれず”彼”の背中に腕を回す。
「…ン、アスラン……っ」
息継ぎの合間に、名前を呼んで。
わかってる、”彼”はアスランじゃない。
アスランだけどアスランじゃない。
(わかってる、わかってるけど……っ)
わかっていた。
禁忌を犯したことも。
こんなこと、間違っていることも。
でも。
(君の、せいだよ。アスラン……っ)
君が僕を。
僕だけを。
置いていって、しまったから。
ずっと一緒だと。
たとえ何があっても、もう二度と離れない、と。
そう、誓ったのに。
約束したのに。
なのに…
『生きろ、キラ…』
それなのに…
(ずるいよ、アスラン…)
独りで生きられないと、知っていたくせに。
君が居なきゃ、生きる意味なんてないのに。
なのに、君の最期の言葉が。
『おまえは生きろ…、キラ……』
僕を雁字搦めにする。
独りでなんて、生きられないのに。
君の後を追うことも、できない。
(ずるい、よ…)
”彼”の背中に回した腕に、力がこもる。
「キラ」
わかってる。
”彼”はアスランじゃない。
間違ってることも、わかってる。
だけど。
全部、君のせいなんだ。
君が悪いんだ。
君が、僕を。
置き去りにしてしまったから。
--- 2003.7.28 ---
最初に感じたものは、浮遊感。
最初に耳にしたものは、弾けてはまた生まれる水泡の音。
最初に目にしたものは、
今にも壊れそうな、紫の瞳。
+
「…ふ……、ぁ…っ」
俺の舌がなぞる度に、”キラ”の口から苦しげな息が漏れる。
呼吸が段々と速くなる。
押さえつけた足から伝わってくる震え。
限界が近いことを感じ、わざと強く吸い上げる。
「……っ…」
その瞬間、”キラ”の腰がびくっと跳ね。
俺は、放たれたものをゆっくりと飲み干した。
まだ指に絡まったままの残滓を舐め取る。
”キラ”はぼうっとした瞳で視線を宙に彷徨わせていた。
その紫の瞳は、宝石のようで。
けれど。
今にも壊れてしまいそうな輝きで。
「アスラ…ン」
熱に浮かされたような、声で。
俺の名前を呼んだ。
+
「アスラン」
その紫の瞳の持ち主は、俺のことをそう呼んだ。
その途端。
その瞳から、無数の透明な雫が零れ落ちた。
ずきん
何故か、胸の奥の方が痛い気がして。
不思議に思った、瞬間。
その腕に抱きしめられていた。
ただぎゅっと、何も言わずに。
けれど、とても暖かくて。
とても、心地よくて。
暫くそうした後に、そっと体を離されて。
もっと、そうしていたくて思わず手を伸ばそうとした。
その手を、自分の指と絡めて。
今にも消えてしまいそうに、
微笑んだ。
とくん
その微笑みが、俺の何かを支配した。
胸の奥から、暖かいものが広がっていって。
「アスラン」
―― 囚われていた。
+
”キラ”が最初に教えてくれたのは名前だった。
「キラ」
そう呼ぶと。
嬉しそうな、だけど。
今にも泣き出しそうな、顔をして。
”キラ”の涙は、綺麗だったけれど。
それを見ると、何故か苦しくなって。
笑った顔が見たくて。
そのためになら、何でもできると思った。
最初に居た場所から、今のこの部屋に移ってきてどれだけの時間が経ったのだろう。
カーテンを閉め切った部屋は、薄暗いままで。
そこには俺と”キラ”しかいない。
”キラ”はよく部屋に置かれた端末を触っていた。
俺は、そこにある無数の書物を読んで過ごしていた。
「アスラン」
呼ばれて、読んでいた本から目を上げる。
”キラ”の瞳が真っ直ぐに俺を見つめていた。
髪が触れ合う程の距離で。<BR>
そしてそのまま”キラ”の唇が俺の唇を塞いだ。
…次に教えてくれたのはキスだった。
「ン…、っ……ふ……」
最初は唇を触れ合わせるだけだった。
それを何度か繰り返してから、”キラ”の舌が遠慮がちに差し入れられた。
その舌に触れた途端、火傷するように熱くて。
でも放したくなくて。
まるで貪るように、絡ませあった。
濡れた水音が、生まれる熱が、思考を停止させる。
そしてそのまま、無我夢中でキラの唇を貪った。
何度も、何度も。
+
涙が弧を描いて、”キラ”の頬を滑り落ちた。
その瞳は、真っ直ぐに俺の方を向いていたけれど。
俺じゃない”誰か”を見ているようで。
ずきん
また、胸の奥が痛かった。
”キラ”の涙は綺麗だ。
でも何故か、言いようのない焦燥を覚えて。
―― どうしてそんな哀しい顔をするの?
口に出来ない疑問。
―― どこを見てるの?
溢れ出してくる感情。
―― どうしたら、
笑ってくれる?
今にも壊れてしまいそうな、その姿に。
恐る恐る、手を伸ばす。
「キ、ラ」
「…あ……」
僅かに開かれたその唇を、塞いで。
「ン……っ」
舌を絡めると、”キラ”の肩がびくりと震えた。
「…ン、アスラン……っ」
息継ぎの合間に、俺の名前を囁いて。
その度に俺の心は、どうしようもないくらいに騒いで。
何故だかわからない。
名前を呼ばれて、嬉しいのに。
でも、心のどこかに、まるで風穴が開いてしまったかのように。
「アスラン…」
背中に回された腕に、力がこもる。
―― 笑って。
”キラ”が笑うと、空気が変わる。
暖かいものが、内からも外からも流れ込んできて。
俺のこの体を満たす。
笑ってほしい。
その笑顔が見れるなら、何でもする。
何でも、できるから。
この感情を、何と呼ぶのか。
俺はまだ知らない。
--- 2003.7.29 ---
忘れない。
忘れたくない。
この躯は、今でもはっきり覚えている。
+
「キ…ラ…」
段々速くなる呼吸の合間に囁かれる、僕の名前。
”彼”の口から漏れる息と、僕の立てる水音以外に聞こえるものはなく。
「キラ、もう……っ」
思わず僕の頭を引き離そうとするけれど。
僕は構わずに、顔を埋めたまま。
「………ッ」
そうして、彼の放ったものを喉元に感じて。
その温かさを、喉を鳴らして飲み下した。
「キラ」
名前を呼びながら、”彼”が蹲っていた僕を自分の目の高さまで抱き上げた。
その、翡翠の瞳で。
僕を真っ直ぐに見つめて。
どくん
躯の奥が疼く。
その衝動の理由(わけ)なんて、とっくに知っていた。
「キラ…」
名前を囁きながら、僕の唇に触れる。
よく知った、感触。
「ん……っ…」
触れるだけのキスが、じれったくて。
僕は自分から舌を絡めた。
粘ついた音が漏れる。
(足りない…)
”彼”の首にしっかり腕を回して、どんなに深く口づけても。
(もう、これだけじゃ足りないよ…)
理由なんて、ひとつしかなくて。
……アスランが、欲しくて。
+
「アスラン…」
長い長いキスを終えて、凭れかかった”彼”の胸で名前を呼ぶ。
とくん
とくん
鼓動が聞こえる。
それは確かに”彼”が生きている証。
じっとそれを聴いていると。
喉のあたりが熱くなって。
思わず脳裏に浮かびかける情景を、僕は必死に打ち消した。
「何?」
短く、”彼”が訊く。
僕は何も言えずに、ただじっと彼の顔を見つめていた。
「キラ…?」
訝しげに僕の名前を呼ぶ唇を、また塞いで。
軽いキスを繰り返しながら、”彼”のシャツに手をかける。
震える指で、ひとつずつボタンを外しながら。
瞼に、頬に、首筋に。
ゆっくりと、キスを落としていく。
最初は軽く、そして。
「…痛ぅ……っ」
所有の証を、残すように。
「キラ?」
少し驚いたように、”彼”が僕の肩を押そうとする。
その手に、自分の手を重ねて。
「アスラン…」
潤んだ瞳で、”彼”を見つめて。
「今から僕がすること…覚えて……?」
+
今でもはっきりと覚えている。
キスの仕方も。
愛撫の順番も。
この躯は、今でもずっと覚えている。
…どんな風に、僕を抱くか。
覚えている。
君が触れた場所、すべて。
灼けるように、熱く。
―― こんなにも、
覚えているのに。
ギシッ…
ふたり分の重みを受けて、ベッドが軋む。
君の残した証を、そのままトレースするように。
”彼”の躯に、口づけていく。
「…っ………」
”彼”の躯がわずかに上気しているのがわかる。
這わせた手のひらに、わずかに汗ばんだ肌を感じて。
そっと唇に伸ばした手に。
絶え間なく、吐息がかかって。
「アスラン…」
”彼”の躯から一度顔を上げる。
「口、開けて?」
僕に言われた通りに開いた口に、僕の指を潜り込ませて。
柔らかくて熱い舌に触れた。
「舐めて…」
ぴちゃ
僕の言うがままに、”彼”が僕の指を咥えこむ。
水音をさせながら。
ぞく…
その光景と、背筋を走る言いようのない感覚に耐えて、じっとその姿を見つめる。
隈なく舐め上げた頃、透明な糸を引きながら、そっと”彼”の口から指を離す。
「よく、できたね…」
そう言って、唇を重ねながら。
”彼”の唾液で濡れた指を、”彼”の入口まで運ぶ。
「ね、アスラン。ここ…、わかる?」
そして、おもむろに指を1本挿し入れた。
「ここだから、覚えて」
「あ……っ」
「力、抜いて? アスラン」
苦しそうな息を吐く唇を、また塞ぎながら。
指を増やしていく。
くち
くちゅ…
濡れた音を立てながら、中を掻き回す。
”彼”は苦しげに眉根を寄せたまま。
必死に、初めて感じる異物の感触に耐えていた。
それでも、段々とそこは熱く熟れていった。
(もう、いいかな…)
すっと、指を引き抜いて。
「ちゃんと力、抜いてね。アスラン」
ぐいと、”彼”の足を持ち上げて。
「最初は痛いと思うけど…我慢して」
僕自身をあてがって、ぐっと一気に挿し貫いた。
+
「あ…っ、ン……っ」
「キラ…っ」
「う…、アスラ…ン……っ」
”彼”が何度も僕の中を行き来する。
その度に、スプリングが悲鳴を上げる。
僕が”彼”に教えた直後に、何度も交わった。
飽きることなく、求め続けた。
欲しくて欲しくて堪らなかった、その温もりを。
その、存在を。
一番近くに、感じたかったから。
「あ…、アスラン、もう……っ」
「キラ…」
”彼”の熱を、中で感じて。
僕自身も、解き放って。
その度に流れる、この涙の意味を。
今はまだ、知りたくなかった。
--- 2003.7.30 ---
「僕はもう、夢は見れない」
それは、微かな呟き。
けれど確かにそう、口にした。
壊れそうな、瞳で。
+
”夢”を見た、のだと思う。
場所はどこかわからない。
けれど確かに、そこにふたりはいた。
暖かな光の中。
輪郭もぼやけて、その表情もはっきりとはしなかったけれど。
それでもわかった。
目の前にいるのは、確かにキラで。
今よりもっと華奢だったけれど。
それでもそれは、キラに間違いなくて。
―― 暖かかった、から。
そのキラを見つめるもうひとり ―― 俺も、暖かいもので満たされていたから。
だからそれは、キラだった。
何を話していたかも聞こえない。
それでもそのふたりは、とても楽しそうで。
……とても、
幸せそうで。
+
ふと開いた瞳の先にあるのは、見慣れた茶色の髪。
その柔らかさに思わず指を伸ばす。
さらさらと流れるように落ちていく髪が指に気持ちよくて。
そっと、愛しそうに唇を寄せた。
腕の中のキラは、静かな寝息を立てていた。
その温もりが心地よくて。
いつまででも、その温かさに包まれていたい、と。
(これが、”夢見る”ってことなのか…?)
”夢” ―― 一言にそう言っても、いろいろ意味があるらしい。
「キラ、”夢”って何?」
疑問を素直に口にすると、パソコンのディスプレイから顔を上げたキラが、じっと俺の方を見つめた。
それまで読んでいた本を手に、俺もじっとその瞳を見つめ返して。
「”夢”って言っても、いろいろ意味があるんだ」
たとえば寝ている間に見ているもの。
それは願望だったり、いままでの記憶だったり、いろいろなものを内包している。
「記憶?」
「そう、たとえば自分では忘れているような些細なことでも、頭の抽斗の中にはしっかりしまわれてるんだ」
それが再構築されて、夢という形になって表層に現れてくることもある。
「あとは…そうだね、たとえば将来こうなりたい、とか、こうしたい、とか。そういう願いや望みも”夢”っていうんだ」
「ふーん…?」
「それから…ありえないようなことを言うときもあるかな」
「いろいろあるんだな」
「そう、いろいろある」
それは本当に、ふと思いついて口に出したことだったのだけれど。
「キラの”夢”は何?」
その何気ない言葉に、キラの顔が一瞬強張って。
それから、少しだけ寂しそうに笑って。
「僕はもう、夢は見れない」
そう、呟いた。
(キラ…)
その時のキラの言ったことが、何を意味するのかはわからない。
けれど。
(キラは、願わないの?)
ちりちりと、胸の奥が焦げるような感じがして。
胸を掻き毟りたくなるような。
(なんだ、これ…)
訳のわからない、感情。
まだこんなもの、知らない。
(キラ…)
「ぅ…ん……」
腕の中のキラが身じろぎする。
顔をずらしてその顔を覗き込むと、キラは苦しげに眉を寄せて。
(うなされてる…?)
「キ…」
名前を呼ぼうとするよりも、早く。
「ア…スラン……」
キラの口から紡がれた名前。
そして。
固く閉じられた瞼から零れた、一筋の透明な雫。
「……っ キラ!!」
思わず強い口調で呼んで、強く肩を揺すぶった。
「あ…」
「キラ…」
「アス…ラン…?」
その時見たキラの瞳は。
本当に。
今にも、壊れてしまいそうで。
何も言わず、ただ強く抱きしめた。
一瞬、キラは体を強張らせたけれど。
すぐに、背中に手を回してきて、ぎゅっと抱き返してきた。
そして。
「…して、アスラン」
震える声で、そう乞われるまま。
「キラ…」
背中に回していた手をずらして、窄みに指を這わせた。
「…ぁ…っ」
寝入る前までしていた名残か、そこはあっさり異物の侵入を許して。
容易く指を呑み込んでいく。
ぐちゅぐちゅと猥らな音を立てながら、指の本数は増えていき。
「や…ぁ、…早…く」
ガクガクと体を震わせながら、キラがもどかしげにねだった。
「キラ…っ」
「あ…ぁっ」
最奥まで一気に貫いて、小刻みに抽送を繰り返す。
そうして、キラが一番締め付ける場所を激しく打ちつけると。
「ああぁ…っ」
一際大きく啼いて、キラは意識を手放した。
(何を、見た?)
そして。
何を、見ないの?
『僕はもう…』
望まないの?
願わないの?
どうして。
ねえ、
何度でも、抱くから。
だから。
夢は、遠い。
--- 2004.6.27 ---
ひらひら、と。
花が散る。
命が、散る。
+
ハッと目を開ける。
跳ね起きた体中、嫌な汗をかいていて。
動悸が治まらない。
震える手で、思わず口元を押さえていた。
―― 怖い。
目を閉じると、またあの光景に呑まれてしまいそうで。
爪が喰い込むほど、拳を握り締めた。
「う…ん……」
隣から聞こえてきた声で我に返る。
(あ……)
隣に眠る、その姿に。
その髪も。
その肌も。
確かに、アスランのもので。
長い睫毛に、そっと手を伸ばし。
閉じられた瞼に、そっと口づけた。
「キ…ラ…?」
眩しそうに、開かれたその瞳が。
真っ直ぐに、僕を捉えて。
「アスラン…」
名前を呼ぶ、僕の唇を。
そっと指で、なぞって。
そのまま僕を引き寄せる。
「ん……」
口づけながら、互いの指を絡ませあって。
ギシ…
ベッドが軋む。
そのままの体勢のまま、位置を替わって。
「キラ…」
僕の名前を紡ぎながら。
その唇は、僕の躯に幾つもの痕を残していく。
…まるで。
花弁のように。
+
触れていないと不安だった。
自ら選んだくせに。
失う怖さに、怯えていた。
気怠い体を椅子に預けて。
見るともなしにモニターに目を向ける。
まだ躯の芯は、甘く痺れたまま。
あれから、数え切れないほど躯を重ねた。
僕の躯には、”彼”の証が絶えず印されていた。
昨夜の痕も、その前の痕も。
先程の、痕も。
消えぬうちに。
まだはっきりと、残されたまま。
「キラ」
窓辺で本を読んでいた”彼”が、僕の方を振り返る。
「雪が降ってる」
「え?」
”彼”の横に立って、一緒に窓の外を見る。
「ああ、風花だね」
「カザハナ?」
「うん、晴れた日に降る雪のこと。ほら、まるで ――」
……花弁の、ように。
どくん
「…キラ?」
心配そうな”彼”の声。
(大丈夫、大丈夫だから…!)
だってアスランは、ここにいる。
―― どくん
花弁のように、舞う白い雪。
―― どくん
『キラ』
『アスラン』
『本当に戦争になるなんてことはないよ、プラントと地球で』
―― どくん
『おまえは生きろ、キラ……』
―― どくん
足元が揺れる。
立っていられなくなる。
「キラ…!?」
……アスランの声が。
遠くなる。
+
桜は嫌い。
風に舞う花びらは、君を連れて行くから。
あの日、月で別れた時も。
そして。
漆黒の、宇宙で。
飛び散ったジャスティスの破片が、まるで。
宇宙(そら)に舞う、桜のように ―― …
「キラ…」
額に優しく触れる手を感じて、重い瞼を上げる。
心配そうに僕の顔を見上げる”彼”の姿に。
「………っ」
僕は何も言えずに。
ただその体を抱きしめた。
その存在を確かめるように。
”彼”は何も言わず、僕の髪を撫でてくれた。
…昔の、ように。
「アス…ラン……っ」
思わず名前を呟いて。
逸らすことなく、真っ直ぐに見つめあって。
”彼”が、訊いた。
「俺が、欲しい…?」
僕の頬に、手を添えたまま。
そして、僕は。
「…アスランが、欲しい」
掠れた声で、呟いた。
+
「足、開いて」
すべてを、”彼”の前に曝け出して。
”彼”の視線が、真っ直ぐに僕を捉える。
「……う…、…ン……っ」
湿った音を立てて、温かくて柔らかな感触に包まれる。
「…ア……っ ―― …」
もうすっかり僕を知り尽くしている”彼”は。
あっさり僕を昇りつめさせた。
余韻に浸る暇(いとま)も与えられず、抱え上げられる。
向き合ったままの姿勢で。
(あ……)
ゆっくりと、焦らすように腰を落とされる。
いつもよりももっと、”彼”の存在を中に感じて。
躯の内から湧き起こる熱を、自分ではどうすることもできずに。
助けを請うかのように、”彼”の唇を塞いだ。
その間も、痺れるような疼きはとどまることをしらずに。
「アスラ…ン」
涙声で、呼んだ瞬間。
ほんの一瞬だけ、”彼”の瞳が揺れた気がした。
何かを言いかけるように、口を開きかけて。
でもその言葉は、飲み込んだように。
かわりに口にしたのは、僕の名前。
「キラ…」
僕の腰を抱く力が、強くなる。
「キラも、動いて」
「う…ん」
”彼”の腕の中で、何度達したか覚えていない。
ただ、覚えているのは。
”彼”に抱かれながら、霞む視界の端に映った、
真っ白な、花弁のような雪だった。
--- 2003.7.31 ---
雨が止まない。
地表にも。
…この、胸にも。
降り続く雨ですら、この痛みを消せやしない。
+
……雨音がする。
いつの間に降ってきたのか、窓の外からは雨の音が聞こえてきて。
気怠いまどろみから引き戻されたキラは、薄く目を開けた。
(雨……?)
首だけ動かして窓の方を見ると、この時間ならもう日が差し込んでいるはずのカーテンの向こうが薄暗い。
規則正しい寝息を漏らす”彼”の腕からそっと抜け出して、起こさないように床に散らばったままの着衣を拾って身に着ける。
窓の方に立ち、そのままぼんやりと雨の音を聞いていた。
カサ…
微かな音。
それでも確かに雨音に混じって聞こえてきた音に敏感に反応したキラは、まだ”彼”が眠っていることを確かめてから、玄関に向かう。
カツン
確かに聞こえる。
不思議と心は騒いでいない。
なんとなく予測していたからかもしれない。
段々と近くなる音に、ふっと自嘲的に笑んでから。
キラは扉を開いた。
「やっと見つけた」
真っ直ぐすぎるその瞳に。
穏やかに微笑んで、キラがゆっくりと口を開く。
「久しぶり。……カガリ」
+
微かに降る雨の中。
暫く無言で歩いた。
ゆっくりと、”彼”の居るあの家から。
遠ざけるように。
何も言わずについて来ていたはずの気配がぴたりと止まる。
キラもまた立ち止まり、カガリの方に向き直った。
「みんな心配してる」
ぽつりと、カガリが呟くように言った。
「いきなり病院から脱け出して…っ ずっと探してたんだぞ!?」
「……それで?」
「!?」
「それで、カガリはどうしたいの?」
「どうって…、キラ……?」
まさかそんな風に返されるとは思っていなかった。
いや、それよりも。
キラの声があまりに無機質に響いて。
カガリは得体の知れない惧れを覚えた。
「僕は行かない。僕はずっとここにいる」
「おまえ…?」
「だってここにはアスランがいるから」
「おまえ、何言って……」
無邪気に笑いながら答えるキラに、カガリはその惧れの正体に嫌でも気付かされた。
「アスランは死んだんだぞ!?」
びくっ
語気を荒げて言い放ったカガリの言葉に、キラの肩が震える。
「アスランは死んだんだ! わかってるだろう!?」
「違…、違う…、死んでなんか……っ」
震える声で、うわ言のように呟くキラに、ぶつけようのない怒りと悲しみを覚えながら。
「現実を受け止めろ! あいつは死んだんだ…!!」
振り絞るように、カガリが現実を突きつける。
「悲しいのは…おまえだけじゃない……」
静かに付け加えたその言葉に、ぴくりとキラが反応した。
「そう…だよね」
「キラ……」
まだ俯いたまま、キラが口を開く。
「カガリもアスランのこと、好きだったよね…」
「!! …キラ!?」
口元をひきつらせたまま、ようやくキラが顔を上げる。
「なにも姉弟揃って同じ相手好きにならなくてもいいのに」
それとも姉弟だからかな、と静かに笑いながら言うキラに、カガリは先程と同じ惧れに体中が冷えていくのを感じた。
「でもアスランはあげないよ? カガリにも、ラクスにも。…誰にもあげない」
「キラ…」
震えながら伸ばした手を、キラが振り払う。
「……ずっと、好きだったんだ」
「………」
「一番大切だった。ずっと一緒にいられるんだと思ってた。なのに、戦争が僕たちを引き離した。一番大事な人と戦わなきゃいけなかった僕たちの気持ちが君にわかるの!? 戦って…戦って、それでもやっとまた一緒にいられると思ったのに、なのに……っ」
漆黒の宇宙(そら)に。
眩いばかりの閃光が。
「…僕は…」
すべてを打ち消すかのように、激しく頭(かぶり)を振って。
「僕は、アスランと一緒にいる ―― !!」
「キラ…!!」
走り出す背中を追えぬまま、カガリはその場に立ち尽くした。
いつの間にか激しさを増した、雨の中で。
動くことができなかった。
「馬ッ鹿野郎……!!」
涙と一緒に零れた言葉には。
言いようのない怒りと、悲しみと…悔しさを、滲ませて。
確かにアスランのことは好きだった。
けれど。
(おまえが大事なのに…)
なぜわからない。
わかってくれない。
何もできぬ自分の無力さと、気付いてもらえぬ苛立ちとが。
痛みとなって、体中を駆け巡る。
「…あいつを、解放してやってくれ……」
思わず天を仰いで、呟いていた。
「お願いだから、アスラン……」
……この、雨は。
おまえも泣いているから ―― …?
+
「キラ…?」
隣にあるはずの温もりがないことに気付き、そっと声をかける。
脱ぎ捨てたままの服をとりあえず身に着け、寝室を後にする。
(今、何時なんだ?)
窓の外は薄暗くて時間がわからない。
部屋に置かれた時計を見遣ると、昨夜までは動いていたはずの針が止まっていた。
「バッテリーパック…、どこかにあったな」
見当をつけて棚や抽斗を開けていく。
「ん…?」
何かが引っかかっている。
そっと抽斗を開けると、箱が出てきた。
「何だ…?」
そっと開けてみる。
中に入っていたのは、大事そうに包まれた手のひらサイズの包みと。
(…写真?)
その中の1枚を手にしてみる。
「え……?」
+
カタン
扉を後ろ手に閉めて、ロックする。
無我夢中で走っている時も。
ここに、戻ってきた今も。
『あいつは死んだんだ』
カガリの言葉がリフレインして、頭から離れない。
「……ってる」
頬から零れ落ちた雫は。
打たれた雨か。
「わかってるよ、そんなこと ―― …っ」
…それとも。
「キラ?」
その声に、びくりと顔を上げる。
「アス…ラン……?」
”彼”が心配そうに駆け寄ってくる。
「どうしたんだ、びしょ濡れじゃないか」
ちょっと怒ったような、その言い草も。
全部、アスランのもので。
「ほら、風邪ひくから」
引っ張っていこうとしても、キラは一向にその場を動こうとしない。
「キラ?」
「………」
また俯いてしまったキラを、無言で抱き上げて。
服が濡れるのも構わずに、”彼”はそのままキラをシャワー室まで連れて行った。
そっとキラを脱衣所に降ろして。
シャワーの温度を調節してから、キラの方を振り返る。
キラはそのまま、ぼうっと立っていた。
「ほら、ちゃんと暖まらないと、風邪ひくだろ?」
一向に動こうとしないキラの代わりに、服を脱がせてやる。
触れた肌は、冷え切っていた。
「ちゃんとシャワー浴びるんだぞ?」
それだけ告げて、出て行こうとした。
「キラ…?」
まだ俯いたままで、キラが服の裾を握り締めていた。
冷え切った体を。
…この、心を。
「……て」
消えてしまいそうな声で。
「アスランが…暖めて……」
壊れてしまいそうな、瞳で。
キラが、”彼”を見つめた。
「……っ」
何かに耐えるように、ぎゅっと瞳を閉じてから。
キラを壁に押し付けて、噛み付くようにキスをした。
「……ん、…ふ」
息継ぎもままならぬほど、激しく、貪って。
服を脱ぐのももどかしく、シャワーで濡れるのも構わずに、そのままキラの躯を愛撫する。
「…は……っ……」
シャツが肌に張り付く。
背中にシャワーの熱を感じながら、それでも休まずキラの躯に痕を残していく。
自分のものだと、主張するように。
「ぁ…、アスラン…アスラン……っ」
「……っ」
叫ぶように、名を呼ぶキラに。
言いようのない想いを、ぶつけるように。
「ん…っ、ぅ……ン ―― 」
唇を塞ぐ。
そのままベルトを外し、もどかしげに自身を取り出して。
「………ぅ…っ」
ろくに慣らしていない入口に、突き立てた。
唇を離さぬまま、激しく抽送を繰り返す。
「ぅ………ン…」
激しい攻めと息苦しさに、キラの瞳に涙が滲む。
それでも構わずに、唇も、キラの腰を抱く腕も緩めずに。
「………!!」
キラの躯が一際震えて。
それと同時に締めつけられた自身も、キラの内に解放して。
ようやく、唇を離す。
それと同時に、キラの躯からカクンと力が抜けて。
気を失ったキラを、そっと抱きとめる。
その躯を、ぎゅっと抱きしめて。
「……どうしたら………」
その呟きは、シャワーの音に掻き消されて。
キラの耳には届かない。
雨は、激しさを増していた。
--- 2003/8/1 ---
「う…ぁ……っ、アスラ…ン ―― っ」
声が、聞きたくて。
「ぁ……あ…っ、もう…」
この雨に、掻き消されてしまわぬくらい。
「まだだ、キラ。まだ…」
「ア…、や……っ」
声を、聞かせて。
+
「な…んで……」
震える手で、その写真をもう一度見る。
そこに映るのは。
まだあどけない顔をしたキラと。
「あ…」
大人びて見えるが、それでもまだ幼さを残した…
「なんで…俺が………!?」
どくん
どくん
心臓が波打つ音が、やけにはっきりと耳につく。
ざわざわと。
体中が、ざわめいて。
思わず自分の体をかき抱いていた。
窓の外から聞こえてくる雨音は、先程よりも激しさを増していたけれど。
俺の動悸を掻き消してはくれない。
自分自身を落ち着かせるように、深く息を吸い込んで。
大きく息を吐く。
すべて、吐き出してしまえるように。
取り落としてしまった写真をもう一度手に取る。
無邪気に笑うふたり。
楽しそうに。
…幸せそうに。
ズキン
他の写真もそうだった。
すべて、ふたりで映ったもの。
その、どれもが。
幸福に、満ちていて。
「………っ」
思わず唇を噛み締める。
言いようのない虚無感。
それなのに。
憎らしいくらい、鼓動だけははっきりと聞こえて。
写真を置き、一緒にあった包みを取る。
開いてみると、緑色の小さなロボット鳥があった。
電源を切ってあるのか、動かない。
『…び傾げて………って、……よ』
一瞬。
頭のどこかで、声がした気がした。
(何…だ……?)
緩く頭を振って。
もう一度手の中の鳥を見る。
「っ……」
衝動的に床に叩きつけそうになって。
……でも、できなくて。
そっと包みなおして、写真と一緒に箱に収める。
あった場所に、元通りに箱を戻して。
俺はそのまま立ち尽くしていた。
(…知らない)
写真に写る、幸せそうに笑うキラの姿が。
脳裏に焼きついて離れない。
(俺は、知らない)
ぎり…
もう一度、唇を噛む。
「あんな表情(かお)…」
俺は、知らない。
+
「アスランが…暖めて……」
声が聞きたい。
触れたい。
その、すべてが。
欲しいのに。
こんなにも、渇望しているのに。
「ン……っ」
キラの躯が、ガクガクと震える。
苦しげに、塞いだ唇から漏れる息が俺を一層煽り立てる。
あまりの激しさに一瞬唇が離れても、またすぐに塞いで。
声を聞きたい。
でも、その名前は今は。
…聞きたく、ない。
華奢な躯を壊してしまいそうなほど、激しく突き立てて。
…いっそ。
壊して、しまえば ――
+
俺の腕の中で気を失ったキラを、そっと抱き上げてシャワールームから出る。
濡れた体を拭いてやって、俺自身も着替えて。
寝室に運んだ。
キラの呼吸は落ち着いていた。
そっと触れた頬には赤みがさしていて。
……温かかった。
―― それなのに。
胸の奥に開いた穴から、風が吹きすさんでくるように。
俺の中に渦巻く冷気で、凍えそうになる。
(いつになったら)
いつになったら、キラは”俺”を見てくれるのだろう。
どんなに、抱いても。
キラの瞳は、俺ではない俺を、見ていて。
…どうすれば。
「”俺”を求めてくれるんだ? キラ…」
--- 2003.8.2 ---
この痛みは、どうすれば癒える?
+
閉めきったカーテンの隙間から僅かに覗く空は、昏く。
聞こえてくる雨音は、止むことなく続いていた。
その雨音に紛れて響く甘い呻きもまた、休むことなく部屋に満ちていた。
「…っ……ぅ」
咬まされたタオルの所為で、喘ぎは声にならず、ただ、くぐもった呻きとなってキラの口から漏れる。
その間も、キラの躯を押さえつけるように、容赦なく”彼”が出入りを繰り返す。
「………っ ―― !!」
びくんと一際大きくキラの躯が跳ね、そのままベッドに沈み込んだ。
肩で息をするように、その躯は小刻みに震え、瞳には涙が滲んでいた。
そんなキラを”彼”は荒い息を吐きながらじっと見下ろし、無言でキラの躯から自身を引き抜いた。
その拍子にキラの内から零れ出た白濁したものの中には、赤いものも混じっていて。
それと、まだ体を震わすキラの姿を交互に見遣って、”彼”が大きくひとつ息を吐いた。
そっと、キラの涙を啄ばむように目尻に口付けながら、キラの口を覆っていたタオルを外す。
その途端、キラは苦しげに息を吐いた。
空気を求めるように喘ぐ唇を、今度は己の唇で塞いで。
キラが苦しげに眉根を寄せるのにも構わずに、口内を蹂躙していった。
そうしてようやく離した唇から、透明な糸が引かれる。
されるがまま、潤んだ瞳でこちらを見つめるキラを、愛しそうに、けれど、辛そうに見つめ返して。
「……ごめん」
それだけ言って、キラをその場に残したまま、”彼”は寝室を後にした。
+
「くそっ」
廊下に出た途端、背中を壁に預けて。
そのままずるずると力なく座りこんで、頭を抱え込んで俯いた。
―― 満たされない。
どんなにキラを抱いても、心が満たされない。
声を聴きたい。
その声で、名前を呼んで欲しいのに。
でも、キラが呼ぶのは。
(俺じゃない)
キラが見ているのは、自分じゃない”自分”。
キラが、求めているのは。
(”俺”じゃ、ない ――)
ギリッ…
爪が喰い込むほどに、拳を握り締める。
(どうしたら、いい……?)
キラしか要らない。
キラだけ居ればいい。
キラだけが欲しい。
他には何も望まない。
だから。
(キラの全部が、欲しいのに…)
何でもするから。
何だって、できるから。
だから、あの笑顔を見せて。
「キラ……っ」
”俺”だけを、見て ―― …
+
”彼”が出て行った部屋の天井を、ぼんやりと眺めていた。
雨は、変わらず激しく窓を叩いている。
『…ごめん』
苦しげに、呟いた”彼”。
(違うよ…)
むしろ、謝るのは自分のはずなのだから。
ふっと、自嘲的な笑みが口元に浮かぶ。
最近の”彼”は、まるで犯すように自分を抱く。
激しく、…狂おしげに。
追いつめたのは自分。
自分のエゴで、”彼”を傷つけた。
きっと、今も。ずっと ――
「……っ痛…」
寝返りを打とうとして、走った痛みに顔を顰めた。
何度も”彼”を受け容れたそこが痛い。
……いっそこのまま、殺してくれたらいいのに。
恨んでくれていい。
自分の為だけに、”彼”は生まれた。
そして教え込んだ。
―― ”アスラン”のこと以外。
そう、すべて。
自分の、エゴの為に……
(同じじゃないか)
血は争えないと言うことか。
”最高のコーディネイター”を作り出そうとした、顔すらも知らぬ父。
己の欲するがまま、大切なことを見失い、飽くなき欲望という名の狂気に侵された父と。
これではまるで、同じではないか ――
(アスラン……)
光に消える、アスランの笑顔と。
苦しげに歪む、”彼”の顔が。
重なり合う ―― …
(……僕は)
零れ落ちた涙がシーツを濡らす。
「僕は…最低だ」
--- 2003.9.8 ---
ゆらゆら、と。
闇の中を漂い続けるこの心に。
一条の光さえ、見えなくて。
いっそ、誰か。
一思いにこの息の根を止めて、と。
ずっと、ずっと叫んでいた。
+
「っ…、アス…ラン……、ま、待って…っ」
「……っ」
制止の言葉も耳に入らぬかのように、乱暴に躯を暴く。
まだ慣らされていないそこは、それでも”彼”を受け容れて。
「……ぁ……っ」
痛みにキラの口から思わず声にならない悲鳴が洩れる。
それでもすぐに、”彼”を放したくないとでもいうように、内は灼けるように熱くなる。
「あ……ン…ッ」
キラの顔からは、次第に苦悶の表情は薄れ、代わりに口からは甘い喘ぎが洩れてくる。
けれど、それを目にしても、一向に満足した気配も見せずに、”彼”の動きはより一層激しさを増していった。
―― あの雨の日から、”彼”は我武者羅にキラを抱くようになった。
”彼”の中で、何が変化したのか。
キラは敢えて、それを考えようとはしなかった。
どんなに激しく攻められようとも、この躯はそのままの”彼”を受け容れる。
それで構わなかった。
……いや。
むしろ、いっそこのまま壊してくれたら、と。
心のどこかで、漠然と思っていた。
「あ、あ……っ」
あまりの激しさに、壁についていた手までも震える。
力の入らない腕で、それでもどうにか体を支え。
「―― …ッ」
より深く奥を抉られたキラの躯がびくんと震えた瞬間、”彼”もまたキラの内にすべての熱を放って。
荒い息をキラの耳元で吐きながら、自身を無造作にキラの内から引き出した。
急にバランスを失ったキラは、力の入らない体を支えきれずに、崩折れるようにそのままそこに蹲った。
肩で息をするキラを、無機質に見下ろして。
一瞬、顔を歪めたかと思うと、膝をついてキラの体を起こしてやる。
まだ荒い呼吸を繰り返す唇を、そっと塞いで。
落ち着かせるように、背中を撫でてやる。
滑らせた手のひらに、熱を帯びた肌を感じて。
すべてが甘く、愛しいのに。
「キラ…」
そっと名前を呼ぶと、閉じられた瞼が開く。
その拍子に、溜まった涙が弧を描いて頬を滑り落ちていく。
その雫も、綺麗で。
壊れてしまいそうなほど、綺麗すぎて。
「ア…スラン……」
その、声も。
本当は、愛しくて堪らないのに。
「え…? ぁ…、やぁ……っ」
冷たいフローリングの上に組み敷いて、達ったばかりの躯に割り入っていく。
「ひぁ…っ」
床の冷たさと、捩じ入れられた”彼”の熱に、キラの全身が総毛立つ。
あまり味わったことのない感覚に、知らず”彼”を締め付けて。
「悦いの…? キラ」
耳元で囁かれて、そこからまた熱が生まれてくる。
恥ずかしげに頷くキラに、どうしようもないほどの愛しさがこみ上げてくる。
けれど、同時に。
言いようのない空しさも、また。
心の奥に渦巻いていた。
キラの片足を持ち上げて、グッと奥まで突き挿れる。
「は…ぁ……ッ」
一番奥まで、繋がるように。
何度も何度も繋がった。
その甘い喘ぎも、熱も。
すべて奪うかのように、貪って。
それでも、手に入らない。
一番欲しいもの。
「キラ…」
抱くことしか、知らない。
--- 2004.1.1 ---
| 05 | 2026/06 | 07 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
| 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
| 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
| 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
| 28 | 29 | 30 |
真性アスキラー。
思いもよらずダブルOが歴代G
の中で一番好きな状況に。
成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。