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「…何故、消えぬ」
ぽつりと漏らしたその呟きは、誰の耳にも届くことはなかったであろう。
つい先ほどまでの喧騒は、もうそこにはない。
そこに在るのは、かつて生者であった者たちの抜殻ばかりである。
戦場(いくさば)特有の血の匂いも、先ほどから降り出した雨で薄れつつあった。
けれど、未だ消えぬものも、ある。
『幸村愚鈍なれば、言葉にて返答あたわず。利根なる政宗様にはわが槍をご覧なるべし』
およそ皮肉など似合わぬその者が口にした言葉。
その言葉が、その槍が、この心の奥の何かを打ち砕いた。
そして ―― …
「何故消えぬ…!!!」
在りし日のその姿が、その声が、陽炎のように ―― 消えない。
豊臣に膝を屈した折、戦場以外で幾度かその姿を目にすることがあった。
戦場で見る燃え盛る炎のような姿からは想像もつかぬほどに穏やかな空気を纏い、まるで華のような笑みを湛えていた。
その笑みを向けていた相手は、ただひとり。
そして、秀吉亡き今、徳川に付いたこの自分に向けられた、その槍と違わぬ鋭き視線。
そこに漂うは、悲哀か、憤怒か、絶望か。
(いや、違う…)
その瞳に宿したものは。
ただひとり笑みを向けた彼の者への、……深き想い。
「三成は敗れたのだぞ」
今はもう動かぬ、その指先を見つめたまま。
「そしておまえも、……幸村」
言葉と共に、何かが頬を滑り落ちる。
雨は段々と激しさを増しつつあった。
「涙など…わしは、……知らぬわ…っ」
…そう、知らなくていい。
この心に燻るものの意味など。
―― 降れ。
「降れ…もっと」
(泣けぬわしの代わりに)
この心に立ち込める、陽炎のような、その想いを。
向けられることのなかった、その微笑みを。
時に眩しくさえあった、その姿を。
消し去るほどに。
激しく。
「もっと降らぬか! このわしが竜となり、天へ昇れるほどに」
……そう、すべてを。
消し去って、しまえるように。
--- 2007.1.24 ---
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真性アスキラー。
思いもよらずダブルOが歴代G
の中で一番好きな状況に。
成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。