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………どこまで行けば終わりが見える?
ダンッ
華奢な体を、乱暴に押さえつけて。
「もう一度訊く」
無機質な声で、問いかける。
一番、大切な。
一番会いたかった、相手に。
「ザフトに来る気は?」
その問いに、一瞬瞳が揺れて。
それでも、真っ直ぐに。
視線を逸らさぬままで。
「…僕は」
ゆっくりと。
言葉を噛みしめるように。
「僕は…友達を置いていけない」
その言葉に、カッと頭に血が昇るのがわかる。
”友達” ―― ?
ずっと一緒だった、この自分よりも。
たった3年、側にいた友達の方が大事だと?
しかもその相手は、コーディネイターではなく…
「ナチュラルは…」
襟元を掴む拳が震えて。
「母だけでなく、おまえまで俺から奪うのか!?」
「アスラン……」
激昂して思わず叫んだその言葉に、キラが痛ましげに瞳を伏せた。
……たった3年。
言葉にするのは容易いけれど。
とても長かった、日々。
すぐにまた会えるのだと信じていた。
けれど、約束は果たされることはなく。
その存在を、いつまでも待ち望んでいた日々。
そして、やがて訪れた悲劇。
その悲劇を引き起こしたものは。
「……許さない…」
「え…」
掴んだ襟元をそのまま引き寄せて、噛み付くようにキスをした。
固く閉じられた歯列に強引に割り入って。
キラが苦しげな表情をするのも構わずに、舌を絡め取る。
ようやく唇を離すと、キラの体からは力が抜けていて。
壁についた手で、どうにか支えているといった様子だった。
そんなキラを冷たく見下ろして、ベルトに手をかける。
「アスラン!?」
そのままキラ自身を取り出して、嬲るように追い詰めた。
「や…っ、ア、アスラン……っ」
慣れない刺激に、あっさり果てたキラが肩で息をしながら名前を呼ぶ。
「アスラン…、な、んで……っ」
指に絡まる残滓を舐めとりながら、その問いをどこか空々しく聞いていた。
「忘れるなんて、許さない」
冷たく、言い放って。
まだ何をも受け容れたことのないそこに、自身を突き立てた。
「……っ、さすがにきつい、か…」
「……ぁ………っ」
痛みのためか、キラの口からは悲鳴にならない空気のような声だけが上がって。
それでも構わずに、無理矢理キラの中を掻き回す。
「ぅ……っ、……ぁ ―― 」
…優しくなんかしない。
ずっと一緒だった時間を忘れて、この自分よりもナチュラルを選んだキラに。
痛みだけ、刻みつけて。
忘れさせない。
忘れるなんて許さない。
「そんなこと…許さない……!!」
「…俺は一体何をしている……」
力なく投げ出された体。
白濁したものの中に混じる、真っ赤な鮮血。
頬に残る、涙の跡。
すべて。
自分のしたこと……
こんなことをして、何になる。
一番大切な存在を、自らの手で汚して。
一番大切な、光を。
自分から、手放した……
「キラ…」
どこか遠くで、声がする。
名前を呼ぶ、声が……
(アスラン…?)
「キラ……っ」
とても、悲痛な声で。
(どうして……?)
どうして、そんな悲しい声で名前を呼ぶの?
『キラ』
アスランはいつも、優しく名前を呼んでくれたのに。
たまに呆れたり、怒ったり。
時には厳しく呼ばれたりも、したけれど。
それでも、最後はいつも。
優しく、名前を呼んでくれた。
それなのに。
『ナチュラルは、おまえまで俺から奪うのか!?』
悲痛な叫び。
(違うよ、そうじゃない…)
そうじゃ、なくて。
『忘れるなんて許さない』
……忘れないよ。
躯の痛みは、いつか忘れても。
一緒にいた日々を。
共に過ごした時間を。
……一番、幸せだった時を。
忘れたりなんか、しないから。
だから、もう ―― …
そんな風に、泣かないで。
…無限に続いていく、
この、想いは。
どこまでいけば、終わりが見えるのだろう ――
--- 2003.9.23 ---
「おーい、どこ行ってたんだよ、キラ」
覚束ない足取りで艦に戻ったキラに、トールが駆け寄ってくる。
「あ、うん…」
言葉を濁して、ちょっとだけ笑ってみせる。
そうすると、この友人はいつも、ちょっと不思議そうな顔をして、でもそれ以上詮索しようとはしない。
無意識のうちにひいた線を、気付いているのか、いないのか。
それでもそんな所は、正直ありがたい時もあった。
気付いてはいたのだ。
どんなに仲良くなっても、心のどこかで一線を引いている自分がいる。
わかっていた。
誰も、彼の代わりになんて、なれない。
「って、どうしたんだよ、おまえ」
顔色悪いじゃんか、と言いながらトールが手を伸ばした。
「…っ」
その手が体に触れそうになる瞬間、キラは反射的にその手を払いのけていた。
「キラ…?」
「あ…」
無意識だった。
「ご、ごめん…!」
トールは呆気に取られたまま、謝るキラを見つめていた。
「何でも…ないから」
まともに顔をあわせられず、キラは逃げるようにその場を立ち去った。
ザーッ…
「痛…っ」
熱いシャワーが体を濡らす。
もう出血はしていないようだが、無理矢理アスランを迎え入れたそこが痛い。
躯には、いくつもの痕が残されて。
(アスラン…)
目が覚めたとき、そこにはもうアスランの姿はなく。
まるで、夢の中の出来事のように。
ただ、躯に残る痛みだけが。
それが現実だったのだと、悟らせた。
『忘れるなんて許さない』
悲痛な叫び。
(忘れるわけ、ないじゃないか……)
『おまえまで俺から奪うのか!?』
―― 痛い。
体中、引き裂かれるように。
アスランの叫びが、頭から離れない。
この躯に残された、痛みよりも。
アスランの、哀しみが。
何よりも、痛くて…
「…スラ……ン」
躯の痛みは、いつかは消えるけれど。
この、痛みは……
「アスラン…っ」
あの日、君と別れてから。
君を想って、何度泣いただろう。
でもきっと、どれだけ涙を流しても。
この痛みを、流し去ることはできない。
僕からも、……君からも。
それでも。
シャワーの音が、消してくれるから。
だから、いいよね。
…せめて、今だけは。
君を想って、泣いていいよね ―― ?
--- 2003.9.24 ---
『忘れるなんて許さない』
―― まるで、うわ言のように繰り返した言葉。
そうだよ、キラ。
忘れるなんて許さない。
そして、俺も。
赦されはしない。
●
「くそっ……」
ダンッ
思わず拳で自室の壁を殴りつける。
―― 痛い。
叩きつけた拳よりも。
心のどこかが、ずっと軋むように痛んでいた。
「な、んで……」
その内を蹂躙されながら、それでも縋るように此方を見つめた紫の瞳。
その瞳に、透明な涙を溢れさせて。
いつでも、その瞳は。
ずっと、綺麗なままで。
「こんな細腕で…あんな機体(もの) ―― っ」
組み敷いた体も、昔と変わらず華奢なままなのに。
「や…っ、アスラン……、…痛……っ」
何も、変わっていないのに。
…どうして……?
「忘れさせてなんてやらない」
傷つけるように。
「ぁ…や……っ…」
その躯も。その、心も。
「忘れるなんて許さない ―― !!」
キラも、……自分自身さえも。
気を失ったキラは、力なく四肢を横たえて。
痛々しすぎるその姿に、先程までの激情が一気に醒めていった。
頬に残る涙の跡に、そっと手を触れようとしたとき。
「…アス…ラン……」
微かに、呟かれた名前。
その声に、心臓が瞬時に凍えた。
自分が、してしまったこと。
大切な光を。
自らの手で、封じてしまったこと。
「俺は…何を……」
自嘲的に、呟いてみても。
それは現実。
どうして。
ただ、守りたかっただけなのに。
一番大切な光。
一番大切な…キラを。
どんな顔をして会えばいい?
あんなことをしておいて。
どんな…顔で……
(何を…)
また会えるとは限らない。
今、キラは敵なのだ。
もう二度と、会えないかもしれない。
ギリ…
爪が喰い込むほど、拳を握り締めて。
再び壁を殴りつけようとして思いなおす。
そのまま壁に凭れて、ぼんやりと天井を見上げた。
あの日、桜の下で、涙を堪えて自分を見つめたキラ。
そして、泣きながら、縋るように見つめたあの時のキラが。
重なり合う…
『アスラン…』
「キラ……っ」
…ただ。
守りたかっただけなのに。
--- 2003.9.25 ---
”偶然”も”必然”も関係ない。
出会いも、何もかも。
―― 君、だから。
理由は、ただそれだけ。
●
「アスラン…」
躊躇いがちに呼ばれた名前。
まさか、また会えるとは思わなかった。
まさか、また。
名前を呼んでもらえるとは、思わずに。
どんな顔をしていいのか、わからなくて。
思わず逃げるように踵を返そうとして。
「…待って」
背中に感じた、僅かな温もり。
振り向くと、キラが軍服を握り締めていた。
…あの日の瞳と、同じ。
今にも泣きそうな、瞳で。
じっと、上目遣いで見つめていた。
そんな、キラに。
……恐らくは、自分に。
抑えがたい、怒りと。
愛しさが。
「俺がおまえに何をしたか、わかってるのか…?」
「!」
その言葉に、一瞬キラの体がびくんと震える。
顔も、瞬時に蒼ざめて。
そんな変化に、体中の血が凍えたような、そんな感覚に陥って。
それでもまだ言葉を続けた。
すべてを、傷つけてしまうように。
すべて、壊してしまうように。
「親友だと思ってた相手に犯されて、それでもおまえはまだ俺の名前を呼べるのか!?」
「…けどっ ――」
軍服を握るキラの手に、力がこもる。
「君の手、震えてた」
この躯を、乱暴に暴かれながら。
それでも気付いていた。
その手も。
その、声も。
震えていたことを。
「…恐くなかったわけじゃない」
あの後、艦に戻ってから。
トール達にすら、ちょっとでも触れられるのを拒んだ。
……触れられるのが、恐かったから。
「でも…、なんでかな」
哀しそうに、笑いながら。
キラがそっと、アスランの手を取って自分の頬にあてた。
「アスランに触れられるのは…恐くないんだ」
「………っ」
その言葉に、アスランの顔が奇妙に歪む。
笑いたいのか。
泣き出したいのか。
そんなアスランに、キラがそっと顔を寄せて。
そのまま唇に触れる。
まるで、羽のように。
軽く。
「…嫌じゃ、ないんだ……」
「そんな、嘘なんか聞きたくない…っ」
「嘘じゃないよ…」
真っ直ぐに。
視線を絡ませあって。
そうして暫く無言で見つめあってから。
キラが口を開いた。
掠れた、声で。
「……試してみる…?」
その言葉に、弾かれたようにキラを見つめ返す。
けれど、その紫の瞳は真剣で。
真っ直ぐ、逸らさずに此方を見つめていた。
「…どうなるか、知らないぞ」
「うん」
「手加減なんて…できないからな」
「……うん」
……熱い。
触れられる場所、すべてが灼けるように熱い。
その熱と、痛みが。
体中を駆け抜けて。
どうにかなってしまいそうに。
壊れて、しまいそうに。
けれど、きっと。
哀しみの痛みの方が、強くて。
体に感じる痛みよりも。
その哀しみに、心が壊れてしまいそうで。
……どうすれば。
この痛みは癒えるのだろう。
その哀しみは、和らぐのだろう。
傍にいたい。
でも、できない。
一番大切なのに。
それでも最後に選べない。
きっと、アスランを苦しめているのは自分自身。
勝手だってわかってる。
わかってるけど、それでも。
「アスラン…」
それでも、求めるのは。
たったひとり、君だから。
こんな哀しい日々は。
どこまで、続いていくんだろう……
--- 2003.9.26 ---
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| S | M | T | W | T | F | S |
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| 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
| 28 | 29 | 30 |
真性アスキラー。
思いもよらずダブルOが歴代G
の中で一番好きな状況に。
成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。