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神崎廉が今まで書いてきたSS保管庫。
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見果てぬ幻(ゆめ)は、この想いと同じように拡がって。
まるで、螺旋のように。
幾重にも、絡み合って。



[1]想

―― ”7年”。
口にしてしまえば、簡単だけれど。
その時間は、途方もなく長く、苦しくて。
そう、まるで、息ができないような。
苦しい日々。
生きるために必要な存在(もの)が、いない。
その姿を思い浮かべる度、この胸は軋んで、心が悲鳴を上げる。

―― 会いたい。
触れたい。

おまえが、足りない。

それなのに、時間は無情に過ぎて。
追い求める俺(もの)を、嘲笑うかのように。
7年が過ぎた。
あの日から。

『もしもあの時…僕たち、離れなかったら ―― …』

桜の下で。
キラが消えた、あの日から。



--- 2004/8/21 ---
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幸福だった9年間。
寂しさを知った、3年間。
そして。
想い、
惑い、
憤り、
迷走した1年間。

それでもやっと又、手に入れたと思っていた。
一番望んだもの。
自分に一番必要な存在(もの)。

……なのに。

桜が舞う。
あの日のように。
まだその運命(さき)を知らず、ただひたすら再会を信じた別れ。
優しくて、あまりにも残酷なあの日も。
ただ、桜は柔らかな光を降らせていた。
そして、皮肉な運命に翻弄され、それでもやっと、共に在れた日々。
その、終わり ――
流した涙も、その姿も。
その柔らかな光の中に、溶け込むかのように消えてしまった。

(キラ…)

その夜だって、この腕の中で乱れたのに。

(キラ……っ)

忘れたことなどあるはずもない。
全部、覚えている。
キラの内の灼けるような熱さも。
決して巧くはないけれど、それでもたどたどしくも愛しそうに這わす舌も。
ひとつになった瞬間の、自分だけが知っている表情(かお)も。

「…っ…ぁ、キ…ラ……っ」

手のひらに吐き出した熱は、空しさだけを残して。
甘いはずの息も、溜息と化し、苦さだけが広がっていく。
力なく背中を預けた壁は、ただ、冷たさだけをこの体に伝えていた。



--- 2004/8/22 ---
移ろいゆく花のように、その姿は色を成して。
変わらぬ想いとともに、育んでいった。
たとえ何があろうとも、もう二度と失えない。
失いは、しない。
そう、誓っていたのに。



桜が見たいと言い出したのはキラだった。

戦いが終わり、全ての感覚を放棄してしまったかのようだった、キラ。
無理はすまいと思った。
一番大切なものは、この手に残ったけれど、失ったものもまた、多すぎたから。
だから、ゆっくりでいい。
時の雫が癒してくれるのを、待ちながら。
ただ、傍にいようと。
共に在れることが、どんなに幸福なことか、身をもって知ってしまったから。
だから、ゆっくりと。
傍にいて。
少しずつ、取り戻していこうと思っていたのに。


「ね、アスラン。桜、見たい」

それは唐突な提案だった。
けれど、それでも叶えてやりたいと思った。
そんな風にキラが望んだのは、戦いが終わってからは初めてのことで。
昔は、甘えるキラの我儘をきいてやるのは、自分の役目で。
むしろ、特権でもあった。
だから、本当は。
嬉しかった。
そうやって、何かを望まれること。
きっとそれは、キラの為というよりも自分の為。
そうして、共に行った。
あの場所へ。
幼き日の別れの場所。
桜の舞う、あの並木へ。



--- 2004/9/28 ---
何も変わらない。
たとえ、どんなに時が経とうとも。
この場所だけ、まるで、時が止まったかのようで。
あの日のように、桜が舞い踊る。
キラはただ、その場に立ち尽くし。
じっと、その並木を見上げていた。
そして、自分も。
そんなキラを、見つめて。
―― 恐らくは、互いに。
その桜に、想いを馳せていた。
あの日の別れ。
安息の、終わり。
そして。
果たされるはずの、約束。

『キラもそのうち、プラントに来るんだろう?』

風が、花弁をさらう。
降り注ぐ色は、優しいのに。
それでも。
こみ上げてくる、この想いは。

「アスラン…」
ふいに呼ばれて、自分が思いに耽っていたことを知った。
キラはまだ、その光を仰いだまま。
けれど、その声は。
微かに、震えていた。
そうして、ゆっくりと振り返る。
「もしもあの時、僕たち、離れなかったら……」
滑り落ちる、雫。
それは、キラがキラである証。
新たな始まり。
…そして。
終わり ―― …



--- 2004/9/28 ---
たった一筋、零れ落ちた涙。
それでもそれは、確かに温もりを持っていた。

「もしも…」

キラの口から、続きが語られることはなく。
じっとこちらを見上げる紫の瞳は、揺れたまま。
風が踊らす花弁が、まるで今度は、キラを連れ去ってしまうようで。
思わずその体を掻き抱いた。
強く。
消えてしまわぬよう。
儚い幻ではないのだと。
今、この腕の中に確かにキラは在るのだと。
まるで、そう自分に言い聞かせるように。

「…それでも」
そう、言い聞かせていた。
「それでも今、俺とおまえは、ここにいる」
耳元でそっと囁くと、キラは僅かに身を震わせて。
そして、ぎゅっと抱き返してきた。
「キラ…」
目尻に残る涙を、掬い上げる。
それはまだ微かに、温かくて。
頬に残る痕を辿ってから、柔らかく口付けた。
何よりもよく知った、その唇に。
何度も、繰り返し。



--- 2004/9/28 ---
「…ん……ぁ、…ア、アスラ……」
さらけ出された躯は、この花と同じように、淡く色づいて。
「キラ…」
降り積もる花弁のように、幾つも跡を残していく。
這わせた手に感じる、僅かに汗ばんだ肌も。
全身に伝わる、温もりも。
互いの熱も。
確かに、そこに在って。
「ア…スラン…っ、ぁ……」
背中に走る、火傷のような痛みも。
幻想(まぼろし)のような情景の中、それでも確かなものだったのに。
「キラ」
何度も抱いた。
幼き日も。
敵対した時も。
再び、共に在れた日も。
何度も互いの熱を感じた。
そうして、互いの存在を確認しあった。
互いの、想いを。
何よりも、愛しくて。
何よりも、大切だと。
「アスラン…」
キラが名前を呼ぶ。
名前を呼び返そうとする唇を、そっと指で押し止めて。
唇を寄せた。
軽く、触れるだけの。
そして、徐に体をずらして中心に顔を埋めた。
「キラ…?」
「ん、ぅ…」
先程の残滓もすべて、絡み取るように舌を這わせて。
初めてではなかったけれど、まだたどたどしいその技巧に、それでも再び煽られていく。
「キラ、もう…」
「…ふ…ぅ、ん、……出、して…?」
上目遣いに強請るその表情は、幼いこどものように無垢なのに、たとえようもないほど艶を帯びて。
放った熱を、躊躇いもなくすべて飲み干した。
「キラ…」
頬に触れようと伸ばした手に、キラはそっと自分の手を重ねて。
指を絡ませあって、強く握り締める。
そしてそのまま自分の口元まで運んで、そっと口付けた。
絡めた指をそっと解いて、口に含む。
「ん…」
一本一本、丁寧に舐め上げていくその姿に、熱を放ったばかりだというのに己はすでに固さを取り戻して。
キラの唾液で濡れた指を、キラは自ら内に誘(いざな)った。
そこは、先程よりも熱を増して。
すんなりと指を呑み込んでいった。
僅かに動かしただけで、水音が漏れる。
その度、キラの口から微かな嬌声が漏れて。
熱く洩れる吐息もすべて、奪い去りたくて。
指でキラの内を蹂躙したまま、唇を塞いだ。
口内も躯内も、火傷しそうに、熱くて。
舌を絡ませあったまま、激しく掻き回す指を、キラが押し止めた。
荒い息を吐きながら放した唇は糸を引いて。
背中に回した腕で、ぎゅっと抱きしめながら、キラは自ら腰を落としていった。
この世界にいるのは、自分とキラだけ。
互いだけを、必要として。
互いの躯に、没頭した。
何も、考えられぬほどに。
そして。
眠りから覚めたとき。
この腕に、キラはいなかった。

…それは。
夢の、終わり。



--- 2004/9/29 ---
月は人を狂わすのだという。
地上から見上げる本物の月は、蒼白く輝いていた。
自分たち ―― キラと自分にとってのすべての始まりの地。
そして、すべての終わりの場所。
(いや、違う)
終わらせてなどやらない。
キラと出会ってからの20年。
傍に在れない日々も、確かに自分の中にキラはいて。
(とっくに、狂ってる…)
ふと見遣った自分の右手。
今でもはっきりと覚えている。
肌の温もりも。
内の熱も。
キラのことならば、すべて。
「キラ…」
何度も夢に見た。
それはまた、相手も自分を想っている証だとも言う。
もう一度、頭上の月を見上げる。
最初の別れは、あの桜並木。
そしてそれから4年経った、あの日。
今度はキラが、自分の元を去っていった。
同じ場所で。
あの時と、同じ日に。
あの時流せなかった、涙と共に。
そして、あれから7年。
あの日から、丁度7年が経とうとしていた。


--- 2004/9/29 ---
桜の木の下には、魔物がいるという。
幻を、見せるのだと。
(幻、か…)
ならば、あの日。
幼き日に、涙を堪えて見上げた瞳も。
あの時、この腕の中で熱を帯びた躯も。
すべて、幻だった?
(違う…)
幻なんかじゃない。
キラは、確かにここにいて。

キラが消えた7年の間に、いろいろなことがあった。
けれど。
すべて、自分には無意味なことで。
キラがいなければ、すべて、意味を成さない。
だから、きっと。
自分という存在も、どこにもいなかった。
(幻は、俺…?)

淡い光。
その薄紅の花の中に、溶けてしまいそうだったキラ。
いっそ、このまま。
この自分も溶け去ってしまいたかった。
この風景の中に。

(会いたい)

ずっと、探し続けていた。
それなのに、この手からすり抜けていってしまうかのように、キラの消息は知れなかった。

(会いたい)

幻でもいい。
俺に、キラを返して。

桜並木が揺れる。
風が、花弁を吹き上げて。
すべてを覆い隠すように、視界が白く染まる。
思わず目を細めて、見つめた先。

(たとえ、幻でも…)

「キラ……っ」

ずっと、求めていた。
一時でも、忘れたことなどなかった。
懐かしさと、愛しさと。
込み上げてくる想いに絡まりそうになる足を叱咤して、駆け寄って。
伸ばした指先に、触れた肩。
それは幻などでは、なく。

「アス…ラン……」

名前を呼ぶ声。
宝石のような瞳。
…何も、変わらない。

「キラ…」

そう、何も。
変わっていない。

あの日から、7年が経った。
少年から青年へと遂げたはずの、その風貌は。
あの時と、全く変わらずに。

あの日と同じ姿で、キラはそこに立っていた。


--- 2004/9/29 ---
「キラ…」
「あ…」
思わず抱きしめた体は、確かにキラのもの。
忘れるはずもない。
その柔らかな髪も。
肌も。
匂いも。
すべて、キラのもので。
身を固くしたままのキラから、微かに伝わる震え。
宥めるように、そっと髪を梳いて。
そして、そっとその頬に触れて上向かせる。
「キラ」
その、宝石のような瞳の中に、自分がいて。
「ア…スラン」
微かな声で、名前を紡ぐ唇を、そっと塞いだ。
キラが、遠慮がちに腕を背に回して。
それからぎゅっと、服を握り締めた。
長い、長いキスを交わして。
名残惜しそうに離れる唇が、再び名前を紡ぐ。
「アスラン…」
訊きたいことは、山ほどあった。
けれど、今は。
その温もりに、没頭したかった。


--- 2004/9/30 ---
薄紅の光の中で、しなる肢体。
「ぅあ…ン、あ……っ、…ぁ」
とめどなく零れる雫と、嬌声。
手加減などできるはずもなく、追い上げていく。
桜舞うこの場所に、充満する音は不似合いなほどに、卑猥で。
(夢じゃ、ない)
いつかの風景と同じ。
何度も夢に見た。
けれど。
(夢じゃない ―― )
確かにこの腕の中に、キラはいる。
組み敷いた躯は、確かな温もりを持っている。
その姿が、たとえあの頃となんら変わらないものだとしても。
「キラ…」
「アスラ、ン……ッ」
もうこれ以上深く繋がれないというほど、奥を突き上げる。
「あ、あぁ……っ」
一際大きく啼いてキラが達すると同時にまた、自分もキラの内に熱を吐き出して。
「キラ……」
繋がったまま、抱きしめた。
「アス…ラン」
互いに情欲に掠れた声で、名前を呼び合って。
まだ息も整わぬうちに、キスを繰り返す。

舌足らずに名を呼ぶ声も。
甘い吐息も。
滴る雫も。
熱も。
肌も。
内の熱さも。
すべて、キラのもので。
そう、夢なんかではなく。
キラは、この腕にいた。


--- 2004/9/30 ---
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絵描き兼字書き。
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成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。
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