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神崎廉が今まで書いてきたSS保管庫。
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なんで俺たち、こんなことしてるんだろう ―― …

それは幾度として抱いた疑問。
でもすぐにそれは、快楽の渦に飲み込まれて。
窓から差し込む夕日に、ちらちらと舞い上がった埃が反射していた。
ぼんやりとそれを目で追う。
薄暗い体育倉庫の中は、微かに黴臭い。
積み上げられた飛箱に抱きつく形で総士を受け容れていた。
何度目だろう。
もう数えるのもやめてしまった。
理由を問うたこともない。
疑問は、口にすることはなく、いつも互いの熱に掻き消されて。

「…何考えてる? 一騎」

耳元で囁く声は、昔からよく知っている。
答えるのも億劫で、首だけ回してその顔を視界の端に捉えると、総士は口元に笑みを浮かべてじっとこちらを見ていた。
「…東京に、行くことになった」
(東京?)
声には出さずに唇の形でそう繰り返すと、ゆっくりと頷いた総士の唇に塞がれて。
すぐに離れた唇が、言葉を続ける。
「羨ましい?」
「…別に」

東京 ―― 日本の首都。
それは即ち、ここ、竜宮島の外ということ。
外の世界。
生まれてからこれまで、この島のこどもたちは、この島から出たことはない。
限られた世界。

(衛か甲洋あたりなら喜びそうだな…)
興味がないわけではない。
―― ただ、
億劫、なのかもしれない。
閉じられた世界から出ること。
安寧から脱け出すこと。
変化はなくとも、そこには平穏があるから。
(だから…?)
だから、敢えて疑問を口にしないのか。

なんで、俺たちは……

「ねえ、一騎」
突然、総士の声が頭に響く。
いつの間にか、思考の海に沈んでいたらしい。
「シャングリラ、って知ってる?」
唐突に突きつけられた問いに、まだ頭がついていっていない。
どこかで聞いたことがある気はした。
けれど、ゆるゆると頭を振った。
「昔の人が書いた話に出てくるんだ。理想郷、ってやつ」
理想郷、或いは桃源郷ともいう。
万人が憧れるであろう、その地。
「一騎は、あると思う?」
「…わからない」
あるのだろうか。
本当に、そんな場所が。
「行ってみたい?」
「……わからない」
わからない。
本当にそんな場所があるのか。
あったとして、本当に自分はそこに行ってみたいと思うのか。
わからない。
どうして、突然。
そんな問いかけを発したのか。
「…連れていくよ」
ぽつりと、総士が呟いた。

「連れていく」

君が、望むなら。


ところどころ埃で汚れた服を拾って身につける。
総士は既に日が翳った小窓の向こうをじっと見つめていた。
「どれくらい、行くんだ?」
思わず口にした問いに、総士がゆっくりと振り返る。
「寂しい?」
「……別に」
素っ気無い答えに、わざとらしく肩をすくめながら苦い笑いを一つ漏らして。
「多分…1ヵ月、くらいかな」
1ヵ月後。
その頃にはこの島は、すっかり夏一色に染まっているだろう。
「総士…」
「何?」
(総士は…)

あると思う?

何故か、訊けなかった。
訊いちゃいけないと思った。


その時漠然と感じた胸の奥にわだかまる靄のような焦燥感も、この空の蒼さに飲み込まれて。
この閉じられた世界で。
この蒼さが、ずっと続くのだと思っていた。



―― 連れていくよ。
たとえ君が、望まなくとも。

--- 2004.7.12 ---

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プロフィール
HN:
神崎 廉
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性別:
非公開
自己紹介:
絵描き兼字書き。
真性アスキラー。
思いもよらずダブルOが歴代G
の中で一番好きな状況に。
成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。
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