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神崎廉が今まで書いてきたSS保管庫。
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「キラ…」
涙を拭う指先も、温かい。
そう、いつだって。
アスランは、温もりをくれた。
いつも一緒だった、幼い頃も。
引き離された、時でさえも。
ずっと、そう。
たとえ自分は、何も彼に与えられなくとも。
ずっと、無条件に与えられた温もり。
そして、享受し続けた自分。
今も、尚 ――
「アスラン」
力の入らない腕を伸ばして、ぎゅっとアスランの服を握り締めた。
まるで、縋りつくように。
「キラ…?」
アスランが驚いたように、名前を呼ぶけれど。
それには構わずに、その唇を塞いだ。
「抱いて?」
震える声。
必死な顔をしていたのかもしれない。
けれどアスランは、唇を噛みしめて。
「駄目、だ…」
絞り出すように、ただそれだけ告げた。
「なんで…?」
また涙が流れる。
その雫の意味を、もう知っていた。
「駄目だ…、キラ……」
「や、だ…」
「駄目だ…っ」
駄々をこねるように強請るキラの体を、抱きしめて。
「駄目だ……」
「アスラン…」
「……俺が、おまえの変化に気付かなかったと思うのか…?」
「え…」
ぽつりと呟かれた言葉に、思わずアスランの顔を見上げる。
その顔は、奇妙に歪んでいて。
(ああ、そっか…)
アスランも、知ったのだろう。
「アスラン、抱いて」
「だから…」
「だから、余計に」
「キラ…っ」
…ちゃんと、笑えているだろうか。
泣き虫な自分。
でも、アスランしか知らない笑顔。
覚えていて欲しい。
「抱いて、いっぱい」
「キラ…」
アスランの瞳に涙が滲む。
そう、アスランの涙も。
全部、自分のもの。
「キラ…、キラ……っ」
「アスラン…」
その熱も。
全部。
そして、自分も。
全部、アスランのものだから。
「ア、スラン…っ」
我儘な自分。
欲張りな、自分。
昔から、そう。
「…忘れ、ないで」
「キラ…」
逆のはずだった。
けれど、知ってしまった。
恐らくは、アスランも。
「忘れちゃ、やだよ…」
最後まで、我儘でごめんね。
「馬鹿…っ、忘れるわけないだろう…!?」
繋がったまま、アスランがぎゅっと抱きしめる。
暖かい腕。
今、時が止まればいいのに。
「うん…」
いろんなことがあった。
けれど、どんな時も。
アスランが傍にいてくれた。
どんな運命に、翻弄されても。
だから。
「僕は…誰よりも幸せだから」

どんな運命が、待っていても。


--- 2004/10/7 ---
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散る花びら。
変わらない風景。
ここだけは、本当に時が止まってしまったかのようで。

『あの日、時間が止まればよかったのに…』

その涙も、声も。
覚えている。
髪も、肌も。
その温もり、全部。
忘れるわけがない。

「やはり、ここだったのですね…」
「ラクス…」
ふわりと柔らかな笑みを浮かべて、ラクスが声をかける。
彼女もまた、深く傷ついているであろうに。
それを表に出さずに、まるで包み込むように笑いかける。
カガリもそうだ。
彼女達は、強い。
きっと、自分なんかよりも。
「本当、綺麗ですわね。この桜並木」
「はい…」
静かに舞い踊る花弁は、すべてを覆い隠してしまいそうなのに。
「キラの言っていた通りですわ。本当に…」
「………キラは、何て?」
「ここの桜は、とても綺麗で、…そしてとても、悲しいと」
「……」
「それから、貴方は嘘が下手だともおっしゃっていましたわ」
「……え…」

大丈夫だから、と。
何度も何度も言い聞かせた。
キラに、そして自分に。
けれど、キラは優しく笑って。
ぎゅっと、抱きしめてくれた。
包み込むように。

「……キラは」
震える、声。
けれど、誰かに聞いてほしかった。
「キラの時間は、動き出したんです」

原因はわからない。
止まっていたはずの時間。
けれど、あの場所でキラを見つけて。
離れていた時間を埋めるように、躯を重ねて。
……願ったからかも、しれない。
同じ時を重ねたい、と。
強く願って、そして。
その願いは、叶ったのに。
急激に動き出した時間。
それが齎した体の成長は、心臓に多大な負担をかけて。
そして…

「俺は、何を恨めばいいんでしょう?」
何を、恨めば。
そして、
何に、感謝すれば。
「キラに出逢って、一緒にいて。何より、幸せで」
そう。
キラさえ、いれば。
「ヒビキ博士が何を求めて、何を望んだのかわからない。知りたくもない。でも、彼がいたからこそ、俺はキラと逢えた」
見果てぬ幻想(ゆめ)の果てに、生まれてきたキラ。
けれど、だからこそ逢えた。
たとえ、どんな運命に弄ばれても。
それでも、キラがいたから。
「幸せ、だったんです、俺は……」

舞う花弁が、視界を染める。

「キラも、同じですわ」
アスランと共に在ったからこそ、どんな運命にも耐えられた。
それは、傍から見ていてもわかるほど。
互いの想い。
強すぎる絆。
羨ましく、…妬ましいほどに。
けれど、その想いは諸刃の剣。
きっとそれも、わかっているだろう。
だからこそ、キラは託したのだ。

『アスランは、嘘が下手だから…』

「アスラン、貴方は…」
風が、木々を揺らす。
「…俺は、大丈夫です」
強く、アスランが言い放つ。
けれどその瞳は、どこか遠くを見つめていて。
「………」
何かを言いかけて、ラクスは口を閉ざした。
ここから先は、踏み込んではいけない気がしたから。
「では、アスラン。また…」
「……はい」
今はその返事を、信じるしかないのだろう。
ふと見上げた桜は、優しい色を湛えて。
そしてまた、どこか悲しく見えた。


「キラ…」
舞い踊る花弁の向こう、まだ幼い自分たちが向き合って。
「キラ」
その向こう、一筋だけ、涙を流したキラが見つめて。
「キラ……」
そして、振り向いたキラは、自分の許を去った時のままの姿で。
「キラ…!!」
全部、覚えている。
けれどそれは、すべて、想い出の中でしかなくて。
「誰か…、誰か、返してくれ。キラを……っ」
幻でも、いい。
幻でもいいから。
「キラを、俺に返して ―― …」

『アスラン』

会いたい。
触れたい。
でも、その声は。
もう…遠すぎて。


散り急ぐ花びらが、ただ静かに降り積もる。
この場所だけは、変わらずに。


--- 2004/10/7 ---
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プロフィール
HN:
神崎 廉
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
絵描き兼字書き。
真性アスキラー。
思いもよらずダブルOが歴代G
の中で一番好きな状況に。
成層圏の向こう側まで狙い
撃つ兄貴を愛してやまず。
BAS●RAの影響で戦国史に
どっぷり。VIVA眼帯。
えろすきーだけどホモスキー
に非ず。
オフラインでは【絶対零度】
というサークル名で活動中。
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